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today's 351 2002.8.26-00:30


  ぼろぼろな駝鳥

 何が面白くて駝鳥を飼ふのだ。

 動物園の四坪半のぬかるみの中では、

 足が大股過ぎるぢゃないか。

 頚があんまり長過ぎるぢゃないか。

 雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢゃないか。

 腹がへるから堅パンも食ふだらうが、

 駝鳥の眼は遠くばかりを見てゐるぢゃないか。

 身も世もないように燃えてゐるぢゃないか。

 瑠璃色の風が今にも吹いてくるのを待ちかまへてゐるぢゃないか。

 あの小さな素朴な顔が無辺大の夢で逆まいてゐるぢゃないか。

 これはもう駝鳥ぢゃないぢゃないか。

 人間よ、

 もう止せ、こんな事は。

     (高村光太郎-「道程」より

 国語の授業なら、解釈もいろいろあるようだけど、
 ストレートに受け取りたい。

 実験動物のことで、
 りかさんがいろいろ書いてくれた。
 また ボクは 考える。
 食べることと
 人の病気を治すために
 動物に毒薬を投与することと
 ボクの中で 同じにならない。
 殺すという その結果は同じでも、
 ボクの中では 同じにならない。

 動物園や水族館も
 ボクの心の中で引っかかっている。
 人が楽しみたいから
 狭い檻の中に閉じこめてしまうこと
 さ、これが許されるんだろうか?

 もしも
 もしもと、問う。
 もしもあなたが「実験動物」だったとしたら、
 もしも自分が「動物園の駝鳥」だとしたら、
 

 人間よ、
 もう止せ、こんな事は。



    ..............(2002.8.26